【旬八の地域おすすめ店】 八百屋と同じく衰退産業? 金春湯の4代目角屋さんが 銭湯業界でビジネスをする理由。

キャプチョン画像。内容が続きます

地元密着のお店を目指している旬八青果店。そんなまちに根差す八百屋として、ユーザーの皆さまに周辺のお店や地域をご紹介したいと思い「ご近所さん通信」を始めてみます!

第一弾は、大崎の銭湯「金春湯」さん。

寒さが堪える季節になってきたのですが、実は金春湯さん、以前より旬八とコラボしてくださっているのです!

昨年9月のりんご湯に始まり。



お風呂上がりのビタミンCに、高級柑橘「せとか」の規格外品を置かせていただいたり



今年の夏には桃を販売させていただいたりしました!(銭湯から遠ざかってしまう企画も楽しんでくださる金春湯さんの懐の広さ...!)



今回はそんな金春湯さんの4代目・角屋さんにお話を伺ってきました。
近年はサウナブームもあり活気ある業界の印象もありますが、国内の店舗数自体は減少傾向にある銭湯産業。
八百屋も同じく衰退産業とされているのですが、まちの皆様に愛されるお店を知りたく、弊社代表の左今も日々通わせていただく金春湯さんの中身を覗かせていただきました!

0:4代目角屋さんは半プログラマー半銭湯屋


インタビューを引き受けてくださったのは4代目・角屋文隆さん。

編集者:こんにちは!本日はお時間くださりありがとうございます。

角屋さん:宜しくお願いします!先ずは自己紹介を。

長くメーカーでITの開発をしていたのですが、3年前にサラリーマンを辞めて実家を継ごうと決めて今銭湯の経営をやっています。

現在は銭湯の仕事をしながらITの仕事も続けて半々くらいです。

そして金春湯経営して3年程経った今年、GW前後に大井町の「すえひろ湯」という銭湯が辞めちゃうという話を聞いて、やってみようかなと考え、そちらも経営を引き継いでみることにしました。今準備中で11月~12月のオープン予定です。そんなところですね。

僕の場合は家業である事が今この仕事している理由として大きくて。銭湯だから...衰退産業だから....の目的ありきで業界に入った訳ではありませんでした。家業が大変そうだから助けないとなの思いが入り口ではあります。

旬八代表・左今:なるほどです。僕も八百屋について衰退産業だから残さなきゃとは思っていなくて、衰退には理由があるはずだけれど、良い部分があるならば変化させて残していきたいよねと思っています。

1:東京都内の銭湯は北陸ルーツ


左:家業継がれる前に銭湯の歴史調べられたりしていたら、お聞きしたいです。

角:はい。銭湯の軒数は現在東京都で500弱程。品川区のみでも22程あります。でも最盛期は、詳しい数字は忘れてしまったんですけれども、何千と有ったようで。現在のセブンイレブンより多かったと聞いています。戦後、土地に人は住んでいるけれども各家庭にお風呂はなく、銭湯は作れば儲かるという時代だったようです。

そして銭湯屋さんって、我が家も石川県出身なのですが、北陸出身の人がやたらと多いんです。銭湯やっている人と話すと8割方の印象です。恐らく、北陸出身の人が都内で開業して「これは儲かるぞ」と親戚引っ張ってきて...と想像しているんですけれども。


2:東京都内の銭湯事情


角:けれども時が流れて家庭風呂の普及等に伴い軒数はどんどん減って500弱程に。

今も都内で毎月2-3軒は閉店と聞きますが、ここから10年20年程で更に減少は加速と想像しています。と言いますのは経営者に戦後開業された方々の子どもである団塊世代の方達が多く、ご自身の引退と同時に店舗を閉められるのではと。

一方で近年若い世代の方が銭湯を継ぐケースが増えてきています。私のように家業として継ぐケースもですし、銭湯継承を事業とする会社が幾つか出てきて東京のみでなく関西及び日本中で数組あります。

そのようなこともあり、過去30年くらい銭湯の利用者数は右肩下がりだったんですけれど、去年から軒数は減りつつも利用者数が上り始めたんです。

左:ちなみに銭湯継承には初期投資3000万円程とも伺ったのですが。

角:私の場合は家業を継ぐ形だったので数千万円に治まったのですが建設となると数億円掛かると思います。

左:それは新事業ではなく買収の会社が出てきますよね。

僕も八百屋で同じように買収&展開を検討した時期があったのですが、八百屋の場合はハードがそれ程特殊ではないので、却って一から自分たちで建てないと求める売上達成できない結論になったのですが。



左:戦後の店舗数増加の時期は初期費用はどうしてたのですかね?借入して...?

角:建築費も違ったとは思うのですが、当時は、親戚を自分の店で雇用し一定貯金ができたら建ててあげる、というケースがあったようです。それでネズミ算で増えていったんだと思います。

左:ところで国内の銭湯利用者数が去年から昇ってきているのは金春湯さんの力のみではなく業界内で一緒にがんばられているからだと思うのですが、そのような空気や動きは感じますか?

角:あります。銭湯だと50代でも若手と言われのですが結構40代前後で頑張る人が出てきている印象があります。業界内の横の繋がりも、私も入り未だ数年ではあるのですが、多分都内でも30~40人は連絡取られる関係にあり。

編:競合にはならないですか?

角:ならないと感じています。実際につい先週の土曜日、ここから徒歩10分程の銭湯がリニューアルオープンしたんです。その当日、謎なのですが、うちとしても過去何番という程多くのお客さまが来てくださって。そうしたら反対側の旗の台の銭湯の方も同じように仰っていました。天候等複数要素あると思われるのですが、競合ではありつつ、あのお店ががんばられている影響でうちのお客さんが増えた、という現象が何回かあるんです。食い合うというより、どこかの店舗がお客様を増やすとおこぼれがくる印象です。

編:1日に複数軒廻られるお客様もいらっしゃるんでしょうか。

角:はい。その土曜日もリニューアルオープンされた銭湯屋さんの感想をシェアしに来てくれる常連さんもいました(笑)

3:金春湯は元・演芸場


角:銭湯の歴史から金春湯の歴史に移ると、創業は昭和25年らしいんです。

編:「らしい」なんですね。

角:はい。実はここの創業者は別の人で当時うちは羽田で銭湯を営んでいました。けれども高速道路建設で立ち退きになり、ここを買って羽田から移ってきたようです。我が家に引き継いでからは50年程になります。

編:「金春湯」は羽田の屋号ではなくこちらの名前でしょうか?

角:能に金春流という流派があるんです。この土地は元が演芸場だったようです。私も聞いた話なのですが、区役所の資料見ると確かに演芸場ではあったようで...確かにそう言われると縦長の感じの建物ですよね。


4:繁盛のきっかけはインターネット


編:先程都内でも月数軒廃業とお伺いしたのですが、友人やメディアを見ていてサウナブームで銭湯は活気ある印象だったので、意外でした。一定数廃業があられるのは何故と考えられていますか?

角:サウナの有無もあると思いますが、メディアに取り上げられるかも結構影響が大きくて。

編:そうなのですね。金春湯を継がれた経緯で「家業が大変そうだった」と仰っていたのですが、その後繁盛するようになられた理由は角屋さんご自身はどのように考えられていますか?

角:当たり前過ぎて恥ずかしいのですが、4〜5年前にホームページを作りSNSを立ち上げました。当時銭湯でHP持ってSNSやっている所は無かったんです。私もサラリーマンだったんですけれどHP作成しSNS運用するくらいはできたので、そこから始めました。

その効果で徐々にけれども確実にお客さん増えていきました。この2つを行うだけでもこれ程にお客様増えるのだと驚いたのを覚えています。


5:金春湯のおすすめポイント


左:お客様の需要の視点からお話伺ってみたいのですが、銭湯の役割が変化していると思います。戦後は衛生的必需品だったが現代は嗜好品に。その時にコンテンツ力が高くないと「自宅のお風呂で良いじゃん」となると思うのですが、金春湯さんは多分その需要を上手く捉えられているのですよね。

角:特別意識した訳ではないのですが、そうなんだと思います。自宅にお風呂がない家は全体の2%程と言われているので。

編:経営者の立場から、金春湯さんの銭湯としてのおすすめポイントはどこですか?

角:取材で良くいただく質問ながらいつも答えるのに困ってしまうのですが、もし3つあるとしたら、1つはかなり綺麗にしている点と思います。掃除は結構しっかり行っています。

2つめはお店とお客さんの距離が近めなこと。結果論ではあるのですが仲良くなりやすいスタッフが多いかもしれません。

3つめはクラフトビール等お風呂以外の選択肢が多い。以上の3つかなと思っています。



編:グッズとかもあられますよね、デザインは自社でされているのでしょうか?

角:はい、自分たちで作っています!

編:グッズ作りのきっかけは...?

イベント出店のために作ったのが最初でした。大崎駅前で「夢さんばし」というイベントがあるのですが3~4年前に出てくれないかとお電話いただき。でもうちが出てもやることないじゃないですか(笑)そこでTシャツでも作るかって作成したんです。

ところが当日期待していたより売れたんです。普段のお客さんだけでなく、SNSで見たという方が結構遠くからTシャツを買いに来てくださり。それで味をしめて(笑)始めました。


(C)金春湯

左:僕は一利用者としてお風呂もかなり差別化されていると感じています。熱いお風呂と冷たいお風呂の温度差がはっきりしています。それは昔からですか?

角:いえ、最近でした。3年前迄は熱いのと緩いのと温度差が2度程しかなくて分かりにくかったんです。お風呂も二個あるだけだし薬入れている訳でも無いからもうちょっと違いをはっきりさせない?と。

左:いや、すごいです。シンプルだけれど求めている人にとっては結構温度差大事です。

角:とても正直にお話すると、その3年前のTシャツ作成等始めてからメディアに取材されるようになったのですが、温度を聞かれるんです。その時に「こっちは42度で、こっちは41度で...」は言っていてちょっと恥ずかしいのもあったんです。誰かがちょっと水入れたら一緒になっちゃう。笑

Tシャツもそうなんですけれど...「これがしたくて」というよりも外面をしっかりするために変えた点が多かったかもしれません。

6:金春湯の運営とすえひろ湯の継承


左:あまり困ってないかもですけれど、採用の話をしたくて。旬八青果店にとってHRはとっても重要な領域なので興味があるのですが、どんな人がスタッフとして向いてますかね?

角:銭湯の仕事はハードスキルは要らなくて、一方で、同世代のみでなく世代問わずに会話ができる人, できそうな人を中心に採用しています。

編:ソフトスキルで判断が難しそうなのですが、採用前に分かりますか?

角:応募時にSNSのアカウントを書いてもらうようにしていて、それで知りたい部分は結構わかる気がします。



編:話題が変わるのですが、事業継承についてお話お伺いしたく。前々から店舗展開は考えられていたのでしょうか?

角:正直にはあんまりなくて...今回も偶々すえひろ湯さんのお話と家族の状況が一致したので継承をと決めたんです。親戚が仲間に入ってすえひろ湯の方を担当してくれることになり。一方で決心の一部には銭湯の軒数を減らしたくないという思いもありました。

銭湯屋の方は多くの方が同様に考えていると思うのですが、銭湯は公衆衛生の一面もあるので自治体からの補助金が出てもいます。その時に軒数が少ないと発言力が小さくなってしまう事実もあるので、その点で数自体を減らしたくない思いがあるのでした。

左:ご親戚が...というのは正に歴史の話と繋がりますね。

角:そうなんです。昔もこのような感じだったのだろうなと先日思っていました。




大崎の町で70年、訪れる方達の身体を温め、まちのコミュニケーションの場となられてきた金春湯さん。

家業として紡がれてきた店舗を大切にしつつ、新しいものを楽しく取り入れられているお店でした。

気温が低下する日々、心身休めに一度いかがでしょうか。



近々オープン予定の大井町「すえひろ湯」さんの最新情報もぜひチェックください!!



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▼金春湯さん詳細▼
住所
東京都品川区大崎3-18-8
営業時間
平日、土曜、祝日 15:30 - 24:00(最終入場 23:30)
日曜 10:00 - 24:00(最終入場 23:30)
定休日
毎週火曜
HP
https://kom-pal.com/
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